わたしと店のはなし 第18回 素材のおいしさを伝えるジェラート店[ともみジェラーto]


扉を開けると、お店のロゴマークでもあるとびきりの笑顔で店主・森兼ともみさんが迎えてくれる。岐阜県出身の森兼さん。岐阜県でジェラート店を立ち上げたのち、より高みを目指し本場・イタリアへ修行に。「食材の持つ味って場所によって違うし、その土地ごとにいいものがある。イタリアに行ったからこそ、日本のいいところに気づけたんです。日本のおいしいジェラートを作りたいと、自分の中で気持ちが固まりました」。ジェラートは最も食材の味が活きるスイーツ。そんなジェラートを通して、日本人にはもちろん、海外の人にも日本のおいしいものを伝えたいと、帰国後京都に出店。今年で7年目を迎える。

森兼さんが素材選びで大切にしているのは、直接農家に会いに行き、話を聞くこと。「以前は日本で一番おいしいものをジェラートにしたいと思っていたんですけど、農家さんに出会って話を聞いたり、採れた果物や野菜を目にしたり食べたりして、一番っていうのはないんだなと」。農家との出会いやつながりが素材への愛情に変わり、その愛情がジェラートのおいしさを変えると森兼さんは語る。

ジェラートをきっかけにお客さんと農家が直接つながることもあるとか。「ともみジェラーtoのtoは“つながる”っ ていう意味を込めて英語にしたんです。私とお客さんや農家さんもだし、農家さんとお客さんのように、いろいろなものをつなげていきたいという気持ちがあります」。

昨年にはイタリアのジェラートの大会に出場し、見事特別賞を3つ受賞した森兼さん。「大会に出る意味って何なのか考えていたんですけど、日本の食材で出場して、賞をいただいて。こうやって頑張っていけば、私に影響力が生まれるんじゃないかと。もっと日本の食材のおいしさを広められたらいいなと思います」。そう語る森兼さんの笑顔の中には、強い使命のようなものを感じた。森兼さんの「to」は世界へ広がっていく。

後味さっぱりの岐阜・棚橋牛乳の「ミルク」とピリピリする感覚が気持ち良い「山椒」のジェラート


ミルク(左・550円)と山椒(右・550円)のジェラート。岐阜・棚橋牛乳のミルクは、食べた瞬間牛乳の風味が広がるも後味さっぱり。山椒は森兼さんが高知県で出会ったもの。鼻に抜ける香りと舌がピリピリする感覚が気持ち良い。

20時(土曜は22時)まで営業。お酒も用意するオトナな雰囲気。2回の移転を経て、昨年3月現在の店舗での営業がスタート。1階は工房とテイクアウト、2階はカフェで、「これまでのお店の要素がすべて詰まっている」と森兼さん。カフェではお酒とのペアリングや季節のパフェなど、プラスαの楽しみがいっぱい。

ジェラートは素材を大切にするからこそ安定剤などは一切不使用。ラインナップは日々変化するため、一期一会の出会いを楽しんで。