わたしと店のはなし 第19回 地元の毎日を支えるベーカリー[coneruya]
「子どものときからパンが好きやったんですよ」。店主の内山健二さんは奈良出身。高校卒業後、大工かパン屋が迷った末、大阪の老舗ベーカリーに就職した。勤続20年を迎え、一区切りが付いた2005年、退職。その1年後、京都の丸太町七本松に「coneruya」をオープンした。「こういう場所に店出せたらいいな、と思ってた所に運良く店出せることになって。それで16年。びっくりしますね。土地のご縁だと思います」。土地勘があったとはいえ、当時ここはゆかりの薄い場所だった。内山さんの店主としての奮闘が始まった。
第二の"土地の縁"が結ばれたのは開店して10年目。偶然隣が空き家になり、工場部分をそちらに移して設備を充実させた。「それでやっと人並みの『パン屋さん』になれました」。今では社員9名を抱える町内の名物ベーカリーになった。店内には100種類以上のパンが所狭しと並び、時間帯にかかわらず追加のパンがどんどん焼き上がる。「閉店まで焼き立てのパンが並ぶ店にしたい」。しかしその思いの裏で、売れ残りのパンがどうしても廃棄になってしまうことが胸に痛かった。
そこで内山さんは昨年3月、店から数メートルのところにパンの自動販売機を設置。賞味期限が短いもの、店頭に並べるにはちょっと形が良くないもの、閉店後でもまだおいしく食べられるものなどを特別価格で販売することにした。結果は大成功。24時間いつでも、しかもお得にパンが買えるとあって喜ばれ、閉店後に泣く泣くパンを廃棄することはほとんどなくなった。「環境も時代も変わるし、問題がない日はないんですけど、それに誠実に向き合って解決しようとすれば、必ずスタッフにもお客さんにも伝わるんですよね」。少しずつでも毎日コツコツと。内山さんの店作りは、止むことなく続く。
お昼を過ぎても焼き立てパンが続々。見るだけで笑顔になれるような親しみやすいパンたち
オープン時間からパンを満載した棚には、お昼を過ぎても焼き立てパンがどんどん並ぶ。「子どもや家族連れが来て楽しいパン屋にしたい」という内山さんの思いから、見るだけで笑顔になれるような親しみやすいパンが店内に数多く並ぶ。また、分けあって食べられるよう、どれも大きめサイズというのも印象的。
オリジナルブレンドの淹れたてコーヒーと、おすすめのパンがセットに。コーヒーセット(350円)
2022年3月、店舗から西にすぐの場所にオープンした「selfpan coneruya」。パンの自動販売機を設置し、24時間いつでもconeruyaのパンを買えるようにした。電子レンジとイートインスペースもある。