「たこ焼きばっかり」11年。ご近所のラブコールに応え再出発!


左京区・吉田東通のたこ焼き店「タコとケンタロー」が一旦その暖簾を下ろしたのは、2020年9月22日のことだった。折しも開店10周年の節目。すぐ近くにある京都大学が新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発出以降休講となり、通りのムードは一変していた。「そりゃもう、すごい人の減り様で。店を維持できず…」。店主、小田研太郎さんは苦笑混じりにそう語る。しかし、店を畳んでもたこ焼き屋という商売を辞めるつもりはなかったという。

小田さんの焼くたこ焼きは、大きなサイズときれいなまん丸が特徴。まるで地球儀を北半球と南半球で分けるように、別々に焼いた生地を手際よくひとつに合わせて焼いていく。独特のふわとろ食感は「大阪風と京都風の間くらい。場所で言うと高槻くらいですかね」。ユーモアを織り交ぜ自らそう称するたこ焼きのバラエティは、30種類を数える。作り置きはせず、注文が入ってから生地がフレッシュなうちに焼いて出すこともおいしさの秘訣。

小田さんのたこ焼きが食べられなくなってショックを受けたのは、誰よりも近所の人々だった。「あそこにまた戻らなあかん」。ご近所さんの声に背中を押されるようにして、小田さんは店の再開に向けて歩み出した。徐々に京大キャンパスも動き出していた2021年3月28日、「タコとケンタロー」再オープン。「まさか同じ場所に帰ってくるとは思ってなかったです」。加えて、出町桝形商店街には「タコとケンタロー パート2」も新規オープンさせた。こちらはメニュー数を絞り、テイクアウトだけの店舗だ。「苦肉の策ですよ」と笑う小田さん。

今は、一昨年に開催するはずだった周年イベントを改めて催すのが目標という。「みんなが何の心配もなくマスクなしで集まれるようになったら、思いっきり楽しみたいですね」

卵をたっぷり使用し、焼くとふんわり卵のいい香りが立つたこ焼き


たこ焼き生地には卵をたっぷり使用し、焼くとふんわり卵のいい香りが立つ。カツオでとった出汁の風味も豊か。

(奥)九条ネギを山盛り載せた「たこ九条(6個480円)」は、甘酢と生姜醤油が効いた専用ソースであっさりと。(手前)食べるラー油と千切りキャベツがトッピングされた「たこラー(490円)」はお酒のおつまみにぴったり。

再び明かりが灯った店頭。2020年9月の閉店時には一旦すっからかんになった店内も、再開に伴ってすっかり元通りに。ご近所さんの中には、一度閉店したことを知らない人も。カウンターにある「祝・11周年」のミニチュアのぼり旗が誇らしげ。営業時間も以前と変わらず23時まで。