わたしと店のはなし 第20回 縁をつなげる喫茶・スペース[山福ジャパン]
なぜジャパン?「ひらめきみたいな感じですねえ。狙いとしては記憶に残る名前にしたかった」と真実さん。雷太さんは「ただ響きだけのことです。『キョウトやろ』ってよく言われるけど、“ジャパン”には『あほらしさ』がでるでしょ」
昨年11月、ホホホ座三条大橋店との共同運営を終え、屋号に「ジャパン」を加えて新しいスタートを切った喫茶・スペース。営むのは絵やアートと料理担当の吉田雷太さんと、空間設計と喫茶担当の真実さんの夫婦ユニット。二人は新しいスタートを機に、幾度目かのセルフリノベーションを決行した。
「普段からそういうのん考えるんは好きなんで」という真実さんの頭の中にあるイメージを少しずつ形にし、細かい部分はやりながら修正。「立体的」な空間をテーマに、吹き抜けが開放的になり、新設された小上がりとテーブル、カウンターの高さの違いによるリズム感が生まれた。子連れも学生も、常連客も一見客も団体客もひとり客も、これまでよりさらに誰もが心地よく過ごせる場所が出来上がった。壁の凸凹や柱や梁の剥げや傷などの「粗さ」を残したことによる、空間の隙と味に、雷太さんが描くアートのサイケデリックな色彩が融合した独特の雰囲気は、そのままこの店の個性だ。
二人にはたくさんのアイデアがある。「周りにいろんなプレーヤーがいて、アンダーグラウンドな人が多いから、自分からアプローチするのが下手なんすよね。『その人らのためにこの場所でできることは何か』みたいなことは常に考えてて」「このええ場所に店という空間があることをどう生かして遊んでいくか」。元々左京区近辺で活動していた二人が、様々な人が行き交う歓楽街のど真ん中で店をやることになったのは、人との縁がきっかけだった。ならばと流れに乗っかって、この店を舞台に出会うはずのなかった人と人、人と場所を繋げていく。使命感なんて肩肘張ったものではなく、ただ「そういうのんが好きだから」と二人はあくまで自然体だ。そんな人柄がまた、人を惹きつけ、ここに呼び寄せる。「ご縁を大切に、無理なく」をそのまま体現するこの店から発信される「おもろい」表現のあれこれ、現在いろいろ進行中。ご期待あれ。
「おいしいほど面白い。そこはめっちゃ大事」。ファンの多い雷太さんの料理
「海老のキーマカレー(1,100円)」は、豚ミンチとあらゆる海老を使った海老の圧倒的風味がたまらない。「おいしいほど面白い。そこはめっちゃ大事」と二人も言うように、ファンの多い雷太さんの料理。
小上がりの「激渋」な床板は、お屋敷で使われていた由緒正しきもの。床板探しに苦戦中、ばったり出会った知り合いから話が舞い込み即決したという「ご縁」が生んだ運命的なエピソードも。
2階はイベントなどで活躍する。